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題名: 橋のない川 (1-7)
著者: 住井すゑ
発行: 新潮文庫 (81.3.25-94.8.1)
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【内容紹介】
 大和盆地の貧しい小村、小森郷。その地区から小学校に通う子供たちはな
ぜか事毎に理不尽な差別を受ける。父を日露戦争で失い、英霊の家である筈
の誠太郎・孝二の兄弟も例外ではなかった。やがて彼らは祖母ぬいの深い智
恵と住職の息子秀昭たちの先駆意識に触れ、差別の根源に開眼する。奈良県
の被差別地区の人々を中心に描く水平社発足前後の大河小説。
 
【感想】
 本年6月、1902年生まれの著者は卒寿を越えてなお第8部を手がけながら
亡くなったのですが、「天寿を全うした」という言葉はきっと否定されるこ
とでしょう。
 さて、本書ですが、差別される側はもちろん悲劇ですが、作者はまた部落
差別の根源には天皇制が存在することを喝破し、「差別をしてしまう人もま
た、解放されていない」ことを言葉を尽くして証明し続けます。しかもそれ
は決して過去の話ではないのです。
 人種差別貧富差別などほかの多様な差別が存在する他地区では目立たない
こともありすが、関西地区においては朝鮮人差別と部落差別は現在でもなお
根強いものがあります。それはタブー視されるだけに、表面に現れにくいと
いう事情もあるのです。
 例えば家探しの際、「環境良好」と言うのは「被差別地区ではない」とい
うことであり、また、今は故人となった関西の漫才師が酒気を帯びてTVに
出演して事件のコメントを述べたときに「あいつら、コレやからな」と言っ
て指を4本広げて見せたことさえあります。これは関西では「ヨツ=被差別
部落民」という隠語なのですが、TV関係者は「4人いたということです」
などと強弁してうやむやにしてしまいました。
 したがって本書の舞台は明治末期から昭和初期の水平社成立前後の時代を
背景としておりますが、「差別意識」の糾弾に関する限りそのまま現代社会
に置き換えることが出来るほど、全く色あせていません。(これはむしろ悲
しむべきことなのかも知れませんが)
 もっとも、それだけの話なら30年以上に亙って読み続けられるはずもな
いのであって、誠太郎と孝二兄弟の苦しみながらも成長していく青春時代
(特に孝二のかなわぬ恋)、祖母ぬいのしたたかな智恵とユーモアなど、描
かれる人間たちは実に魅力的で生き生きとしております。貧しい小作農が示
す日々の感謝と、四季を感じながら送る生活がどれだけ豊かなものであるか、
それを差別して恬として恥じぬ者こそ恥を知るべきでしょう。
 いわゆる正統文学ではなく、また文庫本7冊に及ぶ大部ではありますが、
「死ぬ前にいつかは読んでおくべき本」というものがあるとすればその中に
は入れたい作品です。


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