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題名: 春の祭典
原題: La Consagracion de La Primavera(1978)
著者: アレホ・カルペンティエール
訳者: 柳原孝敦
発行: 国書刊行会 (01/05/05)
価格: \3,200
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【内容紹介】
「もちろんあんたはどこかには行き着くとも。かなりの時間歩きさえすればな」
−チェシャ猫のその言葉のように、ロシア女性ベラは"Exodus"を繰り返す。
バレエを学ぶために故郷バクーからペテルブルクへ。ロシア革命を逃れ両
親と共にロシアを離れイギリスへ。バレエの師マダム・クリスティーヌが
やはりロシアを逃れてパリに教室を開いたことを聞きフランスへ。そこで
ジャン=クロードと出会って恋におち、彼の元へ。思いもかけない恋人の
出現でベラはようやく居所をみつけたかに思えたが、彼は折から勃発した
スペイン市民戦争に国際旅団の一兵士として身を投じてしまう。そして戦
争で負傷した彼を看護するためにスペインに渡ったベラは、後にジャン=
クロードの訃報をもたらすことになる戦友・キューバ人のエンリケに紹介
されるのだった……。
激動の二十世紀、常に戦火に追われ続けながら異郷でも踊ることをあき
らめなかった「キューバのロシア女」の生涯を描くカルペンティエール
1978年の代表作、本邦初訳。
【感想】
本書は一女性の生涯に託して描く「激動の二十世紀史」です。第一次大
戦・ロシア革命に始まり、キューバ革命とそれに続く「ピッグス湾事件」
までを背景に、アンナ・パブロワにあこがれていた少女バレリーナ・ベラ
は、時代によって形作られるように次第に成長していきます。
しかしどの場所においても、彼女は「自分の居場所」を見つけることは
できず、常に追われることを予感しているように見えます。恋人ジャン=
クロードが戦傷から癒えて再び戦場に赴いたとき、彼女は彼の死と来るべ
きヨーロッパの崩壊をも予感し、いくたびめかの"Exodus"が自分の元にも
たらされることを覚悟したことでしょう。その使者がキューバ人エンリケ
だったことは彼女にとっては幸いだったのかも知れません。孤独なふたり
は求めあい、ついにアンナは彼とともに大西洋を渡り、カリブの島へと移
住します。その地で彼女が発見したものは、あのストラビンスキーの名曲
『春の祭典』の原初的リズムそのものの世界でした。
彼女は再びバレエに対する情熱を取り戻し、キューバ初のバレエ教室を
開きます。それも裕福な砂糖成金の白人層に対するものにとどまらず、お
おっぴらな人種差別にあえぐ貧しい黒人やムラータたちを真の対象として。
ストラヴィンスキーの感覚を体現できるのは天才舞踊家ニジンスキーのテ
クニックではなく、「真の跳躍」をも可能にする彼らのエネルギーにある
ことに気付くのです。それは「運命」でも「神の導き」でもありません。
いかなる逆境においてもベラが常に歩き続け、踊り続け、探し続けた結
果なのです。
ベラ率いるバレエ団の『春の祭典』パリ公演は折から勃発したキュー
バ革命のあおりで中止となってしまいますが、アメリカによる干渉戦争
に参戦し負傷したエンリケのもとで、ベラはようやく旅の終わりと悪名
高いバティスタ政権から解放された新しい祖国の誕生を知るのでした。
本作品では、ディアギレフ、オネゲル、ヘミングウェイと言った20世
紀を飾る芸術家たちが話題の中にもひんぴんと現れて来ます。一種の懐
かしささえ憶えるのは、わたくしも懐古趣味に陥っているのでしょうか
ねー。