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題名:  琥珀の望遠鏡 ライラの冒険シリーズ3
原題:  The Amber Spyglass
著者:  フィリップ・プルマン
訳者:  大久保寛
発行:  新潮社 (02/01/30)
価格:  \2,800
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【内容紹介】
「ダスト」の漏洩は続いていた。世界の持つエネルギーは「ダスト」と
ともに奈落へと吸い取られ、子供を食らう「スペクター」が生み出され
ているのだ。世界修復の鍵を握るのは「真理計」を読む少女ライラと
「短剣の守り手」の少年ウィル。しかし、ライラは母コールター夫人に
拉致されてしまった。ウィルは鎧をつけたシロクマの王・イオレクとと
もに、ヒマラヤまでライラを探しに行く。救出されたライラは、父のア
スリエル卿と「オーソリティ」率いる教会の最終戦争の近づく中、真理
計に導かれるままウィルとともに「死者の世界」に降りて行く。そこに
は永劫の苦しみに悶える幽霊たちが群れ惑い、人面鳥ハーピーが司る暗
黒の世界だった。
 そのころ、ふたりの仲立ちとなるべく運命づけられたメアリーは、世
にも不思議な車輪を持つ生物と遭遇していた。そしてライラとウィルの
ふたりが、たがいの眼の中に愛を発見するとき…。
 
【感想】
「ライラの冒険シリーズ」もいよいよ最終巻です。同時にアスリエル卿
と教会の最終戦争も近づき、互いに巡らす陰謀もさらに深まって参りま
す。「造物主」を名乗った老天使は、実は摂政に実権を握られていました。
本来、シンプルな信仰であったはずの教会はすでに権力の巣窟となって
います。
 人為世界に限らず、そもそもあらゆる自然の摂理もまた暴走を始めて
いました。例えば北極海の氷が溶けだし、北極に住むアーマード・ベア
たちは船を雇ってヒマラヤまで氷雪の世界を求めに旅立ちます。こうし
てウィルとイオレクの出会いがお膳立てされるのですが、それは「少年
と白熊」というよりは互いを認め合った「男」の邂逅なのです。もちろ
ん「女」たちも成長し続けます。本巻ではライラの導き手となるメアリー
の存在が大きいのですが、その自然科学者らしい落ち着いたまなざしに
は信頼するに足る威厳さえ感じられます。
 それに比べると「大人たち」の性格はひどいものです。父アスリエル
卿は「ライラ?正直言ってどうでもいい」と放言、しかし利用価値があ
るとわかると一転して保護に乗り出します。母コールター夫人はさらに
重症で、なにしろ嘘が天性となっているので、いったい自分が娘を愛し
ているのかどうかさえわからなくなっている有様。今の子だったらグレ
ちゃいますねー。しかしライラは健気に真理計から自己の能力で読みとっ
た信じる道を進みます。
 
 また本巻では、登場するアイテムやクリーチャーはさらに独創的になっ
てきます。巨木の種子を車輪として共生する生物ミュレファ。身長20セ
ンチでトンボに乗る天性のスパイ種族ガリベスピアン。しかしどの種族
も滅亡が近いことは感じ取れても、自分たちの思惑からは自由になれま
せん。種族・時間・空間の境界を取り払い、死者の群れに平安をもたら
し、この世を修復できるのはもちろんわれらのウィルとライラだけ。し
かし彼らは果たして間に合うのか。そのためには何が必要なのか。最終
的な使命とは何だったのか……。まさに壮大なファンタジー世界に没頭
する快感を堪能できるシリーズです。

→第一巻・『黄金の羅針盤』
→第二巻・『神秘の短剣』

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