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題名:  解剖学者
原題:  El Anatomista
著者:  フェデリコ・アンダーシ
訳者:  平田 渡
発行:  角川書店 (2003/03/31)
価格:  \2,000
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解剖学者が発見した女性の「新大陸」とは…。
【内容紹介】
 1558年3月16日、ヴェネツィア共和国が誇る学問先進性の象徴、名門パドヴァ大学の解剖学者マッテオ・コロンボは、『解剖学方法論』の原稿を学部長に提出した。しかし数日後、彼は異端審問の法廷に立たされ、収監されてしまったのだ。彼が発見したと主張する女性の器官、それは「女には魂が存在しない」というカトリックの教義を証明するものであったはずなのに、どこに手違いがあったのか。そして彼はこの窮地にあたり、いかにして自己の無実を論証するのか。異端審問で有罪が確定すれば火刑は間違いない。その日が迫る中、彼は回想する。彼がその器官「ウェヌスの愛またはよろこび」を発見するには、幼女時代からの天成の娼婦モナ・ソフィアと、カスティーリャからフィレンツェに嫁いだ富裕な未亡人イネース・デ・トルレモリーノスという二人の女性の力があったのだった…。
【感想】
 出版社の宣伝文句は「中世ヨーロッパを舞台に、宗教と科学と性愛が織り成す、禁断の高級官能文学」、表紙の絵は蘭の花だけどあきらかに女性器を模しているデザイン、これで内容がスケベじゃなかったらおぢさんならずとも怒るところですが、そっち方面は予想通り期待するほどのことはありませんでした〜。ここまで読んで大半の方はお帰りになったと思いますので、後は残った方だけ相手に細々と続けます。
 
 女性にクリトリスというものがついているなんて、昔の男性知識人には想像もつかなかったのですね。それは「子作り」という女の責務とは関係なく、どうやら快楽だけを司る器官らしい。もちろん女がセックスで快楽を得るなどとは言語道断、黙って子どもさえ産んでくれればいいという「常識」の支配下にあれば、神が左様なものをお作りになったこと自体どのように解釈すべきか、大いに物議を醸したのでした。
 さて、時代と読み方は違うもののこの主人公と同姓のコロンブスは「新大陸」を発見したと有頂天になったのですけど、何のことはない、そこに住んでいた者にとっては別に新しくもなんともなくて、続々押しかける侵略者の群れにえらい迷惑以外の何物でもなかった。これと同様、女たちは有史以前よりどこがキモチ良いかくらい、わざわざ男性解剖学者に「発見」して貰わなくともちゃーんと知っていたのではないかな。いや、あくまで想像ですが。なにしろわが田舎のおばちゃんたちは、無邪気を装う当時6歳のわたくしの前で、「おめさんはハァ子ども聞いでんのに」などと言いつついろいろあけっぴろげな話をしていたっけ。もちろんそれは庶民レベルの話で、上流階級はあくまで夫に従い子に従うこそ美徳、サネとかマメなど下賤な事柄は口の端にも上してはならないのです。まったく不自由なものですな。
 もっとも文化なんてものは欲望を抑制するところから始まったのかも知れず、昨今のごとく欲望野放しというのもねえ、あんまり美しくないような気がするのもこっちが年取った徴候だったりして。それはともかく、悶える未亡人イネースの末路に、現代の女子割礼、すなわちクリトリス切除と言った男性社会支配風習を重ねて描けば、もう少し厚みも出たかな、という印象でした。


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