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題名:  カルカッタ染色体
原題:  The Calcutta Chromosome
著者:  アミタヴ・ゴーシュ
訳者:  伊藤真
発行:  DHC (2003/06/24)
価格:  \1,800
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【内容紹介】
 最新コンピュータAVAのいいところは認識不能なものを何でも拾ってくることだ。その日そいつが見つけてアンタールのモニターに提示したのは、焼けこげたようなIDカード。それはカルカッタで消息を絶った、アンタールのかつての同僚ムルガンのものだった。マラリア研究史に関心を持つムルガンは、マラリア研究者ロスゆかりの地・カルカッタへの出張を半ば強引に取り付け、そのまま行方不明となったのだ。彼は出発前、監査担当のアンタールに対して辟易するほどに滔々と語っていた。これは何かのメッセージなのか。アンタールは時空を越えた陰謀の匂いを嗅ぎつけたのだった…。
【感想】
 1898年、インド医療奉仕団の軍医少佐ロナルド・ロスは、マラリアが蚊によって媒介される仕組みを発見し、この功績によって1902年のノーベル賞を受賞しました。ロスの発見でマラリア撲滅は近いと期待されたのですが、現在でもなお年間数百万人がこの病で命を落としていると言います。おそらくマラリア原虫もさるもの、年々進化しているのでしょう。そしてもうひとり、マラリア関連ではユリウス・ワグナー・ヤウレグも1927年にノーベル賞を受賞しています。彼の場合はなんと末期梅毒の進行麻痺患者にマラリアを故意に接種する治療を行ったのです。むろん抗生物質などない時代とは言え、すさまじい「治療」ではあります。
 本書はこうした医学史の一時代を下敷きにした一種のSFアドベンチャーなのですが、それだけにとどまらずインドのもつ「不可思議さ」も相まって独特の世界を形作っています。アマチュア研究者の「巻き込まれ」サスペンスというのはしばしばありますが、こっちのムルガンは強引に巻き込まれたがっているようです。もう危ないからやめなさいってば、この「染色体」の犠牲になっているのはあんたの脳のほうではないのか、と聞きたくなるほど。上にも書いたようにマラリアは「虫」ですからね、タンパク質に一本毛が生えたようなウィルスよりはもっと高級、もしもこやつが理性的思考をしていたら…。
 そして文字で描かれるインド・カルカッタに満ちる臭気、ロスとその怪しい助手たちのほとんどカルト的な(あるいはドーキンス的な、とか? ふふふ)あざとい行状、マサラな濃厚風味を保ちつつ最後まで突っ走るというお話なのです。


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