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題名: 耳らっぱ
原題: Le Cornet Acoustique
著者: レオノーラ・カリントン
訳者: 嶋岡晨
発行: 月刊ペン社 (1978/11/10)
価格: \1,400
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【内容紹介】
マリオンは99歳、耳が遠いことを除けばこの年にしては健康といえるだろう。ある日親友のカルメラが、螺鈿象眼のすてきな「耳らっぱ」をプレゼントしてくれた。これをつければ自由に会話ができるようになったのはいいのだが、おかげでマリオンは聞きたくないことまで耳に入ってくるようになってしまった。たとえば曾孫が彼女を養老院に送り込もうとしていることも。
いざこざを起こすよりはと入ってやった養老院では、なんととんでもない陰謀が進められていた。殺人事件にハンガーストライキ、さらには過去の怪文書から天変地異も発生し、親友カルメラ、かつての恋人マールボローも参加して、マリオンの大冒険が始まった…。
【感想】
このほど工作舎からめでたく新訳復刊されたという、一部では話題の本です。さっそく図書館に頼んだのですが、出てきたのは書庫に眠っていたお値打ち妖精文庫版でした。まあ、いっか〜。
なにしろこのカリントン(新版ではキャリントンと表記されているのですが)若いときからシュールレアリスムの画家たちと交流してみずからも絵を描き、パリでは父ほどにも年の離れたマックス・エルンストの恋人となり、やがて戦争が始まりドイツ系のエルンストが抑留されるとスペインからメキシコに脱出、精神を病みつつも恋と絵と小説に日を送るというなかなか波瀾万丈の生涯。本書にはマンディアルグが友人として序文を寄せているほどです。
物語のはじまりは、厄介老人が身内の手で養老院に送られるというごく普通の老人ドラマ風の出だしです。いったいどこがシュールで妖精文庫かと首をかしげていると、これがいつの間にか、どえらい騒ぎになって参ります。
たとえば養老院の食堂に掛けられたウィンクする尼僧像、それには18世紀の不可思議な伝説が秘められていました。話中話「1756年、ローマにて聖列に加えられたる、サンタ・バルバラ・デ・タルタルス修道院の尼僧長ドーニャ・ロサリンダ・デ・ラ・クエバ。ロサリンダ・アルバレスの生涯の真実かつ忠実な記録」がそれです。これひとつ抜き出してもかなりの奇天烈書物で、テンプル騎士団と秘宝聖杯伝説というお膳立て、そしてドーニャ・ロサリンダの最期というのがまた物凄く、こりゃ列聖しないわけには行かないでしょう。
このドーニャの魔力はこの養老院をも巻き込んで、やがてはマリオンも地下世界でそのパワーと向かい合わねばなりません。それは99歳にして受ける真の「洗礼」とも言えるでしょう。この過程を経て、彼女とその仲間は新たな力を得たように見えます。人類は地軸変動により滅びようとも、マリオンの若き日の恋人マールボローとその妹は古来の特殊な一族であり、彼らが生きぬいて地球に繁栄する未来を感じ、恐るべき婆さんたちは拍手で祝福するのでした。
付記1 妖精文庫版の挿画は、まりの・るうにい筆らしい。新版はどうなってるのかしらん。
付記2 メキシコの女性シュールレアリストたち「フリーダ・カーロとその時代」展が03/09/07までbunkamuraにて開催中。9/13からは大阪サントリーミュージアムに会場を移して開催されます。キャリントンの作品も出品されているとのことです。

(妖精文庫で読んだという記念でおます)