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題名: エルフギフト (上下)
原題: Elfgift
著者: スーザン・プライス
訳者: 金原瑞人
発行: ポプラ社 (2002/07/01)
価格: \3,100
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秘剣「オーディンの約束」は、いったん抜かれたら血を見るまでは鞘におさまらない!
【内容紹介】
死にゆく王の遺言は「わたしの後はエルフギフトが継ぐ」だった。それは女に見境のなかった故王が、かつて狩りの最中に出会ったエルフの美女との間になした庶子の名。王弟アセルリックと王の3人の息子、アンウィン、ハンティング、ウルフウィアードは顔を見合わせた。よりによって、あんな半妖の百姓風情に? エルフギフトは王宮ではなく田舎で農夫として育てられていたのである。これまたすでに亡き王妃は新興宗教であるキリスト教を奉じ、埋葬を拒否してミイラと化してなお聖女への道を歩もうとしている。三人の王子たちも母の影響を受けキリスト教に帰依していた。古来の多神教を文字通り体現しているエルフギフトに王国を譲るとは、血で血を洗う争いを約束するものだ。亡き王の意図は果たして内乱だったのか。男たちの策謀と闘争心は燃え上がる。いずれの神はいずれに味方するのか…。
古代イングランドを舞台に、土着宗教と新興宗教の対立と血族間の葛藤を、透徹した視線で想像豊かに描く美しくも残酷なダークファンタジー。
【感想】
『指輪物語』が一部好事家だけのものから一般にも知られるようになったおかげで、「ファンタジー」という言葉に「お花畑で夢を見る」というイメージを抱いておられる方も少なくなったかと思われます。しかし初心者を越えたファンタジーの読み手でも、この作品の骨太さには度肝を抜かれるかも知れません。ここには単なる「ドラゴン・アンド・ダンジョン」を越えたひとつの容赦ない歴史が描かれます。
本書は上巻が「復讐のちかい」下巻「裏切りの剣」と副題がつけられており、王権を主張する嫡出子アンウィンと、王の遺言で選ばれた後継者エルフギフトの戦いが縦の軸となります。古代、まだまだ神が人とともにいましたころ、キリスト教は南方から伝わった頑迷な新興宗教に過ぎず、人々の生活に密着した古代宗教とは相容れないものでした。しかし人間の選択など神にとってはどうでもよいこと。彼らは人が異国の神を崇拝しようと、実はなんの関わりもなくむしろその争いをおもしろがって見ている節さえ感じられます。
古代神すなわち主神オーディンや女戦士ワルキューレは、自分たちの味方であるはずの農夫エルフギフトを一流の戦士に鍛え上げながら、ある一点で不意に見放します。エルフギフトが選んだのは、神への忠誠よりも肉親の情だったのです。
その古代神の残酷さには、人はやはりついていけないのでしょうか。荒々しい北欧の自然から生まれた多神教は、砂漠の苛酷な宗教を母胎としながら「愛を説く」ように変貌した新興宗教に取って代わられようとします。しかしながら、「愛の宗教」を奉ずる者たちもまた、一皮むけば現実の欲望に囚われているのでした。
かつてあった素朴な信仰とは、力と豊饒への純粋な賛美でありシンプルな美しさへの讃仰だったのでしょう。それは同時に現実世界の苦痛と死も肯定するものでした。ここに描かれる、剽悍を謳われたデーン人が行う残虐なる「血染めのワシの刑」、腐臭漂う死者の軍団、すべては古代より続く力と血の伝説の中に、偽善のかけらもなく確かな形で見えています。
そして鍛えられた肉体を惜しげもなく曝し、剣の舞を繰り広げる兄弟の美しさ。オーディン神は君たちを嘉納されるであろう。永遠に…。