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題名: 驚異の発明家(エンヂニア)の形見函
原題: A Case of Curiosities
著者: アレン・カーズワイル
訳者: 大島 豊
発行: 東京創元社 (2003/01/15)
価格: \3,800
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【内容紹介】
 1983年春、わたしはがらくたの詰まったひとつの函をパリのオークションで入手した。そこに収められていたのは、広口壜、鸚鵡貝、編笠茸、木偶人形、手書きの金言、胸赤鶸、時計、鈴、釦、そして最後のひとつの仕切は空のまま。その風変わりで小さな「歴史」は、フランス革命と時を同じくして活躍した驚異の発明家クロード・パージュの「メメント・ホミーネム」―すなわち自分の一生を象徴する品を詰め込んだ函だという。思いもかけない運命の贈り物に、わたしは文字通り取り憑かれたようにクロードの生涯をたどることに専念した。それはまさに「驚異の発明家」にして「記録者」でもあった、ひとりの人物の探索であった…。
【感想】
 産業革命直前、「工学(エンヂニヤリング)」という面ではまだ夜明け前と思われていた18世紀のヨーロッパに、一種の「器械」ブームが到来しました。それは英国とは異なり工業生産のためというよりは、王侯貴族の趣味や見世物のためでした。ルイ十六世の錠前いじりは著名ですが、精緻な細工の時計をはじめマリア=テレジアともチェスを指したと伝えられるオートマトン(自動人形)に至る、発展した「工芸」とも言えそうなからくり器械が作られていたのです。本書はその器械師の目から見た革命時代のフランス裏面史とも言えるでしょう。
 物語は、フランスでも辺鄙な山岳地帯、フェーンの轟く9月に子ども時代の主人公が、いきなり人体コレクターの外科医によって指を切り落とされるという不気味な幕開けで始まります。そしてそのまま「導師(アベ)」と呼ばれる領主伯爵のもとに奉公に出され、その手伝いの中で天与の才に目覚めます。目にするもの、耳にするものを記録するとともに、自分の持っている受容力にぴたりとはまっていく快感を彼は味わいます。およそ「少年」の幸福と言ったら、これに尽きるのではないでしょうか。
 しかし世の趨勢は、このまま純粋培養の器械師が成長することを許しません。この主人公は器械だけではなく、食うためとはいえもうひとつのほうの貴族方がお好きで典雅な趣味、すなわち猥褻画像や猥本の制作に寄り道してしまいます。
 著者の意図はあくまで器械師の生涯を描くことにあったのでしょうけど、 当時の風俗史を調べているうちに看過できなくなってしまったのでしょうか。 こちらの描写もかなり微に入り細にわたっており、むしろメカ蘊蓄よりも乗っている のではないかと思われるくらい。おかげさまで期待していた肝心のメカニック記述や 奇想天外発明などの期待はいまひとつ満たされず、大部のわりにはやや欲求不満が残ります。 御者や三文文士などパリでの友人たちとの交遊や外科医への報復などサイドストーリーも丁寧なだけに、 このあたりはやや残念かなー。

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