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題名: ジャーヘッド ある海兵隊員の告白
原題: Jarhead
著者: アンソニー・スオフォード
訳者: 中谷和男
発行: アスペクト (2003/07/08)
価格: \1,900
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原著副題は"A Marine's Chronicle of the Gulf War and Other Battles"という。ここで言うOtherとは、何を指すのだろう。
【内容紹介】
1990年8月2日、イラク軍はクウェートシティに侵攻、同時にぼくの小隊にもスタンバイがかかった。第七海兵連隊第二大隊偵察狙撃部ステイ小隊。全員が刈り上げ頭、このヘアカットをその外観から「ジャーヘッド」と呼び、ジャーヘッドといえば米軍でも志願マッチョの集まりと呼ばれる海兵の異名なのだ。ぼくたちは出動が決まるとダウンタウンのビデオ屋からベトナム戦争の映画を借りまくった。反戦思想なんて関係ない、殺戮と強姦が眼前に展開する以上、それはすべて好戦的な映画だ。こうしてぼくたちは「殺人者」となるべく、リヤドに進駐した。下士官は叫ぶ。「さあ戦争だ。やっちまえ、ジャーヘッド!」
【感想】
彼・スオフォードは軍人の子。父はベトナムで戦い、突然降りた休暇中のハワイに母を呼び寄せ、彼が受胎したという。父は退役後、枯葉剤のせいか精神的なものか廃人同様となってしまったのにもかかわらず、彼は17歳6ヶ月、法定年限と同時に海兵に志願した。彼はいったい何を求め何になりたかったのか。愛国心、あるいは力への憧れ、それともヒーローを目指したのか?
父親の転属とともに世界中を転々としながら、兄と彼は軍隊を憎んでいたのではなかったか。しかし結局のところ二人とも職業軍人となっている。家族の中の「軍隊の系譜」に自分の居場所を記したかったのだ。それは家庭に流れていた、英雄的な「男性」伝説なのだ。その結果20歳のスオフォード兵長は、その瞬間、数百メートル先に立っているイラク軍将校に照準を合わせている。ここで引き金を引けば、彼は英雄、そして殺人者となれる。だが発砲命令はついに下りず、そのかわりに空軍がデイジーカッター爆弾ですべてを薙ぎ払ってしまった。すさまじいほどの破壊力。イラク兵には何が起こったかを知る時間すらなかったろう。これに対し友軍の犠牲のほとんどは、味方の誤射誤爆による。彼の目の前で、米軍は米軍を砲撃している。それでもこれは「戦争」なのだ。「砂漠の嵐」実戦参加の従軍記章をつけて、彼は田舎に戻ることが出来るのだ。田舎で彼らは飲んだくれては暴れ、ジャーヘッド野郎と陰口を叩かれ、畏怖の視線を向けられるだろう。
「海兵隊」―それは米国民にとってもどこか異質の存在だ。人々は、マチズモの象徴である彼らに、あこがれと畏れを抱いている。そう、なにしろ彼らはほんとうに「人を殺したかも知れない連中」なのだ。一部の人間にとってはなりたくてたまらない職業であり、別の者にとっては唾棄すべき存在である。他人はなんと見ているか、そんなことはどうでもいい。その集団の持つパワーは隊員たる君のものだ。
本書で著者はきわめて冷静に「地球上最強集団」の一員であった自分を振り返り、内面をみつめる。戦争の本質が石油争奪であって強盗と変わりないことくらい、他人に言われなくとも石油の雨をかぶった彼ら自身が一番よく知っている。今回のイラク侵略に従軍した記者たちは、米兵たちの好青年ぶりにとまどっていたという。しかし、誰しもいったん武器を取ればその理由、理非曲直にかかわらず、殺人者となりうるのだ。
いつのまにか「合法」殺人者にされかかっている自衛官、あるいは新日本軍創設・核武装を公言する政治家たち、そして平和を希求する人々にとっても、現代の一兵士の声に耳を傾けるのも悪くはあるまい。