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題名:  パタゴニア
原題:  In Patagonia
著者:  ブルース・チャトウィン
訳者:  芹沢真理子
発行:  めるくまーる (1998/10/20)
価格:  \2,000
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もっとも普遍的な火山岩「安山岩」とは、Andesite=アンデスの石のことである。この国にも、遠きかの地と同じ岩石が転がっている。きっと地の底でつながっているに違いない。
【内容紹介】
 祖母の従兄チャーリー・ミルワードは、商船の船長だった。1897年、彼の船は暴風吹きすさぶマゼラン海峡入り口で沈没する。彼は生き延びてその地に止まり、難所で遭難する船のための修理工場を営んだ。そして彼は故郷の従妹に、なんと「ブロントザウルスの皮」をプレゼントしてくれたのだ。その皮は幼かった私の憧れの的だった。実はそれは巨大ナマケモノの皮だったのだが、パタゴニアはいつしか私の中で伝説の地となり、かつて船乗りたちに恐れられた最果ての地をいずれは訪れなければと感じていた…。
 
【感想】
 全長82km、太平洋と大西洋を繋ぐパナマ運河が開通したのは1914年でした。それ以前そのわずかな距離を船が渡ることはもちろん不可能で、アメリカ大陸の東西を結ぶすべての艦船は、南米大陸最南端のホーン岬を回っていたのです。南極探検にまつわる映画には必ず出てくる暴風圏、南米のそのまた南・パタゴニアはその風を常に受けています。昔から難破は後を絶たず、幾多の船乗りとその家族が泣いたことか。しかし、東西の富を求める者、祖国を追われた者、一つ所にとどまることのできない者たちは、世界の回廊ともいうべきその場所に吹き寄せられます。先住民インディオたちは追い払われ、あるいは不毛の土地に見切りをつけて去ったそのあとに、こうしてさまざまな人種、あらゆる国籍のヨーロッパ人たちが羊たちを連れて乗り込んできました。ある意味では理想郷であり、同時に吹きだまりとも言えるこの地パタゴニアに伝説は事欠きません。
 たとえば名高い強盗コンビのブッチとサンダンス。映画「明日に向かって撃て!」の原題は、まさにButch Cassidy and the Sundance Kid とそのものなのですが、彼らもまたこの地に高飛びし、人々の記憶の中に生き残っています。
 そして大航海時代から始まるすべての船乗りたちと、何よりも悲しき鳥たちよ。天敵のいなかったペンギンは人間の手によって何の疑いも抱かぬまま虐殺され、塩漬けにされて樽に詰め込まれながら、船の上で狂乱の復讐行為に出るのです。そして東から太平洋を越えて来る者たちは、申し合わせたようにビタミンC不足の壊血病と腐りかけた食料で死にかけています。船乗り達ばかりではなく、女性たちもまたその難儀な船旅をみずから選択しました。それは今となってはむしろ不可思議とも思える時代。人々は苦難を耐え、取り憑かれたように何を求めて地球上を移動していたのでしょうか。チャトウィンはそれらの挿話伝説を渉猟し、人々の記憶をよみがえらせます。そしてチャーリー・ミルワードが残した手記から、彼が住み、おそらくは故郷よりも愛した土地、パタゴニアを眼前に再現させるのです。
 
 この作品は、著者がかの地を訪れて記した「紀行文」とされています。しかしその分類から想起されるような「私は某地を訪ねて考えた」という種類のものでは全くないのです。流浪の人々に遅れてきたチャトウィンは彼らの匂いを追い求め、ついにその地に生きた人々の幻を立ち返らせて対話を試みたとも言えるでしょう。なぜわれわれは、歩き続けるのかと。
 チャトウィンはこれにとどまらず、ついに倒れるまで地球上を彷徨し続けることになります。彼は第一作である本書で、すでに次のように書き記していました。
「僕の神様は歩く人の神様なんです。たっぷりと歩いたら、たぶん他の神様は必要ないでしょう」


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