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題名:  500年のトンネル(上下)
原題:  The Sterkarm Handshake
著者:  スーザン・プライス
訳者:  金原瑞人・中村浩美
発行:  東京創元社 (2003/06/27)
価格:  \1,580
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500年の時空を越え、いま炸裂する愛と戦いの物語!
【内容紹介】
 時は21世紀、大企業FUPは極秘裏にタイムトラベル装置「チューブ」を開発、16世紀につながるトンネルを開いていた。「向こう側」のその地域は、当時係争中だったイングランドにもスコットランドにも従わない無法地帯、戦いに明け暮れるスターカーム一族が支配する土地だった。ここならたいていのことをしても歴史に影響を与えることはない。資源と自然環境を過去から盗みたい企業エゴと、裏切りを秘めた契約を意味する「スターカームの握手」を旗印にする権謀術数にあけくれる豪族の取引は成立するのか。当時の風俗を知るべく送り込まれた女性人類学者アンドリアと、スターカーム当主の息子ピーアの恋の行方は…。
 
【感想】
 プライスと言えば『ゴースト・ドラム』や『エルフギフト』のように、伝承を元にした冥界・神界・あるいはその境界の黄昏領域を彷徨する「ダーク」な作家だったはずなのですが、今回の作品はやや雰囲気を異にします。出だしはバリバリのスペクタクルSF調で、タイムトラベルのメカニックもFRPとSUS304でごてごてとセッティングしてあり、こりゃディズニーあたりから映画化オファーでもあったのかと邪推したくなるくらい。もっとも内容はお子様向きなんてところには無頓着、当時の常識そのままに裏切りと流血シーンも満載です。さらにはこの連中、動物たちとほとんど同居だし身体は洗わないしで臭いこと、食っているものもお上品よりは保存を主眼として作られたらしく、どれもみっちり発酵してこれまた臭気紛々、しかしこれこそが16世紀中部イングランドの風俗なのだっという著者の意気込みが窺えます。
 そこに出現する21世紀人は、現地人(あるいは現時人かな)はどうせ迷信深い連中と多寡をくくり、エルフ族を名乗っています。耳も尖ってないくせに図々しいですねー。なにしろ魔法の薬「アスピリン」を持っているのが強みです。北イングランドの気候から来る関節炎や戦傷の痛みには何より、一錠一円以下とも知らず、ほとんどこれ欲しさに操られているようなものですね。いつの時代も呪医は神秘的にあがめられてしまいます。しかし、連中よっぽど迷信深いのか教育がないのか、目を日本に転じれば『戦国自衛隊』や「クレヨンしんちゃん戦国大合戦」でも、日本の16世紀人は未来人が来てもそんなにびっくりしませんぜ。まあ、こうしたタイムカルチャーギャップを目の当たりに見せてくれるという点ではさすがにプライスです。
 欲のぶつかりあいとともにもう一つの軸となるのは、21世紀では美人の範疇に入らないドッシリ型女性人類学者アンドリアと、少女にも見まごうばかりの美青年ピーアの恋愛。当時の「女の地位」はけっして忍従だけという低いものではなかったし、すべての感情をあけっぴろげにして迫るピーアは魅力的には違いありません。しかし、自分の時代を捨てられるかどうかとなると、やはり躊躇せざるを得ません。特にもうひとり、どうやらスターカームの末裔らしき男が現れてからは、いよいよ自分の姿が浮いて見えてきます。さて、その結末は…。
 という具合にアクションあり恋愛ありの大活劇、やっぱりこりゃ映画向きのお話ですね〜。
 


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