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題名: 失踪者
原題: Der Verschollen
著者: フランツ・カフカ
訳者: 池内 紀
発行: 白水社 (2000/11/25)
価格: \2,800
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「不条理」とは「すらっぷすてぃっく」と見つけたり。
【内容紹介】
カール・ロスマン17歳、なんとこの若さで女中に誘惑されて子どもまでこさえてしまい、学業も半ばというのに故郷の町には住めなくなって両親の手でアメリカに追いやられた。そこは名だたる「新世界」、生まれ変わったつもりで生きるつもりが、船を下りるときから早速始まる次々に降りかかる難題と幸運のアップダウン。こんなことでこの先どうなるのか。だいたい噂と全然違うこの新世界とは一体何なのだ。
本作品はカフカの「未完長編」の中でも編者の意図が露骨だと言われていた『アメリカ』を、手稿版により改訂した新訳である。
【感想】
ろくに英語もしゃべれなかった少年が、運命に翻弄されるように放浪する新世界。そこはディケンズばりの波瀾万丈に彩られた、チャップリンばりのドタバタ世界です。女中にも誘われた少年カールはさすがに女性にモテるようで、令嬢にも年増にもなんとなく好かれるのだけど、どうも女難がつきまといます。もちろん世間知らずは見え見えで、男にもいいように利用されてしまうのですが。
突然現れた伯父ヤーコプ氏は上院議員で経済人という名士。だいたいこんな願ってもない親戚と船で出会うというのもうさん臭いなあ。もっともカール君の周囲の連中はみなさん彼に試練を与えるのを使命と心得ているようで、そのまま上院議員の養子にでもおさまって幸せに暮らしました…とはなかなか行かず、「予定通り」追ん出されてしまいます。
次に出会うのはアイルランド人ロビンソンとフランス人ドラマルシュの失業者コンビ、こいつらは当然親切ごかしでカールをむしることしか頭にありません。続いてやさしいホテルの調理主任と出会い、エレベーターボーイとして出世の糸口をつかみます。このあたりの記述はなぜか克明で、なんとなくミルハウザー『マーティン・ドレスラーの夢』を彷彿とさせるほど。これでようやく彼も落ち着いてホテルマンの道を進むかと思うとなかなかそうも行かず…。
たしかに「不幸」と言えば不幸なんだけど、カール君は彼なりに一所懸命、降りかかる難局を理屈っぽく考えるところはさすがドイツ系ですね。そんなことしてる場合かっと言いたくなるくらいだったりして。
ストーリーテリングとユーモアというのはどうもカフカのイメージとそぐわないけど、そうした先入観もくつがえる面白さを持った作品と受け取れました。やはり畳と翻訳は新しい方がよろしいようで。でもカフカは、このうねうね物語にどのような結末をつけるつもりだったのでしょうね。