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題名: 小さな白い鳥
原題: The Little White Bird
著者: ジェイムズ・M・バリ
訳者: 鈴木重敏
発行: パロル舎 (2003/03/20)
価格: \2,600
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陰となり日向となり、常に君を見守っている人がいるとしたら…。
【内容紹介】
退役軍人キャプテン・Wは40歳過ぎてなお独身、頭頂部もやや涼しくなってきた今日この頃、クラブの窓からみかける近所の住みこみ保母、メアリが気になって仕方がない。彼女の笑顔を見ていると、20年以上前に別れた初恋の女が思い出されるらしいのだ。メアリの恋人は売れない絵描き、キャプテンはいやいやしぶしぶながらもメアリの喜ぶ顔が見たくてその恋を手助けし、やがてさずかった赤ん坊デイヴィドと友達になることに成功した。しかしデイヴィドをめぐっては、メアリ、その夫の絵描き、子守として紹介してやったクラブのウェイターの娘アイリーンと言った強敵たちと、愛の争奪戦を演じなければならない。だがキャプテンには、眉毛を動かせるだけではなく「お話」という芸もあったのだ。妖精たちと永遠の赤ちゃんピーターパンの話。そして南洋の冒険物語。
愛犬セントバーナードのポーソスや架空の息子ティモシーも交え、ロンドンの子どもたちのメッカ・ケンジントン公園を舞台に、ファンタジックにしてイギリス紳士らしい物語が綴られて行く…。
【感想】
心理学用語にまで使われた永遠の子どもピーターパン、そのルーツをたどればこの作品に至ります。しかしこれは「童話」ではなく、おかしくとも唇の端っこでくすりと笑みを漏らすのが限度と心得る紳士淑女のための物語なのです。
主人公のキャプテンWはまだまだ謹厳なる軍人魂を残していて、人前で白い歯など見せるなんて思いも寄りません。ま、子どもと犬は例外ですけどね。というわけで、この方、実は深い愛情と優しさの持ち主なのだけど、それを出せないところが奥ゆかしいったら。
イタリア人のごとく若いときから異性に対する愛情も激情もストレートに出していたら愉快に陽気に生きることもできたのでしょうけど、外見はむっつり(しかもス○ベではなくて)のロンドン名物霧に包まれたような顔つきです。ついにこのまま孤絶独身中年を貫くかと思われたキャプテンなのですが、隠れた庇護者を捜すメアリ、デイヴィドをめぐってはライヴァルだけどやっぱりキャプテンのことが好きなアイリーン、どうやら変身趣味もありそうな愛犬ポーソス、そして何より「お父さん」などと殺し文句を吐くデイヴィドのおかげで、どんどん緩んで行きます。もっともこの「お父さん」の文字を見たときは、画家は結局病死して、キャプテンが後添いになるのかと心配しましたけど、そういう筋書きではないのでご安心ください。というより、一貫したストーリーを辿らずケンジントン公園をめぐる大人と子どもたちの関わり方を描くってところでしょうか。それにしてもこうした一歩離れたところから見守る足長おじさん的愛情というのは、ひとつの理想かもしれませんね。
そうそう、なんと言ってもこの本を読めば赤ちゃんがどこからやっていくるか、正しい知識も得られるのが大きい。たぶん皆さん今まで間違えて教わってきたと思います。すでに手遅れかも知れませんが、取締役であるカラスのソロモン・コーじいさんは小さいことにはこだわらないから大丈夫。ついでながらこのソロモン爺さんとピーター・パンのちょっとズレたおとぼけ会話は、アリスと芋虫の会話を思い出させます。一種のイギリス伝統芸みたいなもんですね。