題名: ワイルド・ソウル
著者: 垣根涼介
発行: 幻冬舎 (2003/08/25)
価格: \1,900
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異郷の土となった者たちの声が、貴様たちには聞こえるか。
【内容紹介】
1961年11月、「食いつめ者」日本人700人を乗せた移民船がブラジル・アマゾン河口ベレンに到着した。彼らの入植地はさらにアマゾンを遡った奥の奥、クロノイテ。そこは温帯の島国育ちには想像も出来ない苛酷な熱帯雨林の真ん中であり、雨に洗われつくした強酸性土壌の土地だった。すぐにでも農地が手にはいるとの宣伝文句につられ、借金をかき集めて国を出た彼らは、食糧難にあえぐ戦後日本から棄てられた民であり、外務役人たちの点数稼ぎの捨て駒にすぎなかったのだ。彼らは絶望の淵に追い込まれた。かろうじて踏みとどまった者たちを襲う疫病。こうして人々は故郷の誰にも看取られず次々と土に還り、密林は何事もなかったようにその跡を飲み込んで行く。だが、ほとんど奇跡的に生き残り、その苦しみを忘れない者たちがいた。彼らは外務省移民課の役人ども、JICA、現地の領事、自分の出世のために人を売った連中を許すわけには行かなかった…。
【感想】
最近ではドミニカ移民からの訴訟でも明らかになったように、移民行政における徴募段階での甘言と現実との乖離は当たり前の現象のようです。担当者に言わせれば、「ほんとうの事を言ったら人が集まらない。目的を果たせない」と正当化するのだろうけど、それが本末転倒であることに気付かないほど鈍感なのは役人の常とも言えるでしょう。騙される庶民にしてみればたまったものではありません。艱難辛苦と言うも愚かなこと、有史以来斧も入ったことのない未開の土地に何のサポートのないまま放り出されては死を宣告されたも同様です。
本書はこうした外務省のデタラメ行政で辛苦を味わった移民の子が彼らに復讐するというプロットですが、その報復は血を流さずスマートに、というところがポイント。ミステリと言えば人情話か暴力全盛の昨今、この方向は「小説」としては創るのもなかなか難しいと思われます。コン・ゲーム(騙し屋系小説)でもそうですが、頭脳犯罪はクールに描ければすごーく面白くもなるんだけど、あんまり早々にバレてしまうと悲惨なことになりかねない。その点本書は完璧に成功したとまでは言い難いけど、巻き込まれヒロイン貴子の飾らないスタイルも相俟って、なかなかの線を行っています。日本からの移民とはいえその子たちはすでにラテンアメリカの雰囲気に染まっているから、恨みとは言いながら変にジメジメしていないのもいいのかも知れませんね。